編集 TECHNICAL
リニア編集とは、おおまかに言うとあるテープを再生し 必要な部分を別のテープに記録していく編集方法です。
もともと編集といえばリニア編集のことでしたが、コンピューターに動画を取り込んで作業をするノンリニア編集が出現したことから、Tape to Tapeの編集方法を「リニア編集」というようになりました。
直訳すると、直線的な編集、ということになります。
いくらか編集が進んだところでやっぱり最初のほうのある部分が不要だとなると、リニア編集ではカットしたことで出来た間を詰めるために、その後のすべてを録画し直さなければなりません。時間軸にとらわれた編集だといえます。
多くの人たちが、動画をネットで見たり、自分で撮影したムービーをPCで編集したりする現代。何時間もある長い作品でも、好きな箇所に一瞬で移動して再生したり、映像や音声をどんどんつなげたり切ったり。そういった作業はワンクリックでできる、ということは、もう常識になりつつあります。
そんななかでこのリニア編集の方法は、今失われつつあるアナログ的な作業ですよね。にもかかわらず、リニア編集の大きな特徴は「早さ」なのです!
それは、なぜでしょうか。
テープをデッキで再生し、その映像や音の信号を別のテープに記録する。一見シンプルなこの編集方法だからこそ、有利なことが数多くあるのです。
4Kの出現や媒体の多様化によって、映像作品も今ではファイル納品が徐々に増えてきていますが テレビ番組などはまだまだテープでの納品が主流です。
作品の構成などを試行錯誤するのに便利なのはノンリニア編集ですが、編集の後にデータ化された作品をテープ化するのに、作品の長さ分の時間が更に必要になります。
それに比べリニア編集では、画のつながりや加工を確認しながら録画していくので、編集結果をすべて見ると完成、となるわけです。
コンピューターに計算させる(レンダリングする)ための待ち時間も、HDDの容量を心配する必要もなし。この機動力の高さが、まさにリニア編集の売りなのです。
その日ごとの新鮮な話題を提供する報道や情報番組のように、時間に追われる現場では特に重宝されています。
とはいえ、ノンリニアと違ってアンドゥで瞬時に編集を元に戻すことができないリニア編集。訂正や修正にも実時間、もしくはそれ以上の時間がかかります。エディターにとって、一手一手がまさに後戻りできない真剣勝負。気を抜けない空気のなかで、エディターたちは時には数時間にもおよぶ作品をテープに記録させていきます。
そのリニア編集が得意とする作業の一つに、「テロップ入れ」といわれるものあります。
白やCLEANとよばれる文字情報の入っていない映像に、複数の映像信号を切り替えたり、重ねたりできる機械、スイッチャーを通してテロップや写真などをのせ、もう一方のテープにRECしていきます。
スイッチャーのDVE(Digital Video Effect)・EFFECT機能を使うことで、テロップに動きをつけたり映像を加工したりもします。
テロップや地図、グラフィックなどは、スイッチャーに加え「DEKO」や「Adobe CC」などのソフトを駆使してデザインしています。
番組の方向性を考えて書体の選定から色使い、文字の下に敷く通称『座布団』とよんでいるものやCGまで、全てレイアウトしていきます。
昔は「紙焼き」と言う黒い紙に白地で書かれた文字をカメラで撮影し、映像にのせていました!!
80年代からはやり始めた映像にテロップをたくさん入れて笑わせるバラエティ番組などから培った、伝統芸とも呼べる演出で番組を面白くしていきます。
エディターの経験や感性で、作品にあった画作りを提案し勝負する。テロップ入れは一番難しい部分でありながら、やりがいにもつながる、リニア編集ではメインになる仕事です。
また近年では、デコラーと呼ばれる「DEKO」を使ったテロップデザインを専門とする職種が確立し、新番組の立ち上げやバラエティ番組の編集では、作品を派手に仕上げるのに欠かせないスタッフとなっています。
時には広辞苑のような厚さになったテロップ原稿を目にする事も・・・
年末年始の長尺のスペシャル番組などでは、放送が始まっている中でまだ番組の後半の編集を行っていたりすることもあります。
時間に追い込まれる状況の中でも、リニア編集は作業時間が読めるため即効性と信頼性に優れており、つい先程まで撮影していた映像を作品に盛り込むなど、O.Aギリギリまで編集作業を繰り返す事が可能です。
これらの作業を経てテロップを全部入れきり、時には私生活や我が身を削りながらも番組を完成させ、無事放送された時には心底「ホッと」し、番組に対する反応を得た時には関わったスタッフの一人として、やりがいを多いに感じる事が出来ると思います。
業界全体がノンリニア編集にシフトしていく中、リニア編集のスピードは未だに重宝され、大量のテロップを入れるバラエティ番組などでは欠かせない仕事です。
現在では撮影素材もテープに記録するのではなく、HDDやSDカードなど汎用メディアにデータ記録することも多くなりました。それらを再生するユニバーサルプレーヤーとXDCAMステーションなどとの組み合わせで、File to Fileでのリニア編集も可能になっています。
リニア編集の進化はまだまだ続いています。